「大腸がんの代表的な症状」 |
「出血した」
腫瘍から出血すれば、「便に血が混じった」、「黒い便が出た」といった具合です。ただし、がんではなくても良性のポリープでも、憩室でも、大腸に炎症が起きていても出血はします。肛門周囲の病気、痔瘻、痔核、裂肛、脱肛、直腸脱なども、もちろん出血します。
ということは、これらの病気の全ては、便の表面に血液が付着する可能性が十分にある病気です。「便の表面に血液の付着」でピンと来た方はいますか?そう、「便潜血検査」です。これは、血液の有無を調べているのです。つまり、これらの病気の全てで便潜血検査は「陽性」になる可能性を含んでいます。
しかし、いざ出血しても、その殆どは、大腸がんに代表される「悪性」の病気ではありません。さすがに、便器の水が赤くなったのを目撃すると、ビックリするのは分かりますが、そのような、ある日突然の出血というのは、別のページでも解説していますが、あまり悪性の病気の可能性は高くありません。その解説かこちらから。
むしろ、時々出血していたのは知ってるんだけど、痔のせいだと思っていて、今回の出血は今までとちょっと違って、数ヶ月前から続いて、なかなか症状(出血)が治らない…、という経過を経験している方は、悪性の病気が潜んでいる可能性が疑われます。
大腸内視鏡検査の経験が2〜3年以内に無く、出血したのであれば、それは「便潜血検査陽性」として考えて頂き、すぐに大腸内視鏡検査を受ける必要があると思います。
「便意が頻回になった」
直腸がんに特徴的です。直腸内に何か来たら、それは通常「便」です。直腸から「便が来たよ!排便してくださいな」という信号が脳に伝えられます。これが「便意」です。そして排泄されれば、直腸内は空虚になり、便意は消失する、というのが正常な経過になります。
しかし、これが便ではなく、直腸内を占拠する「腫瘍」であったらどうでしょうか?人間の直腸は、便なのか腫瘍なのかを判断することはできません。直腸は、「とにかく、物体があるから外に出して!」と便意を伝えます。するとトイレに駆け込むでしょう。しかし、いくらきばったところで、その「物」が腫瘍であれば、便を排泄する様に、体外に出すことはできません。
「おかしいなぁ、便がしたい感じがしたのに、便が出ない…。」と言ってトイレから出てきても、またしばらくすると、「また出たい気がする。」という繰り返しになります。つまり、出る事のない直腸内を占拠している腫瘍によって、便意が誘発されているのです。このような現象を便意が頻回にある、専門用語で言うと「テネスムス」といいます。
実際に、ここまで腫瘍が大きくなっている場合、実は、多くの方は、数ヶ月前から出血が気になっていたり、便が細くなってきていた事に、実はちょっと心配と思っていて、やっと勇気を出して大腸内視鏡検査を受けてみた、という方は少なくありません。このような症状が出る前に、病気は発見しておかないといけないのです。
「最近便秘気味、下痢気味になった、お腹が張る」
がんが大きく成長して、内容物を送るのに、支障を来すくらいに狭くなれば、そこには交通事情で例えれば、「料金所」ができたことになり、その後方には交通渋滞(便秘)が発生します。それでも、放置する人は、そのうちに習慣性に下剤を服用するようになり、排便を試みることになるでしょう。
内容物が柔らかくなれば、腫瘍によって狭窄していても、隙間から便が流れるわけです。これが下痢につながります。そして、ついに下剤でも満足に出なくなり、また「便秘」になり、ようやく病院を訪れる人もいます。
普段、便秘でもなんでもなかった人が、ここ数ヶ月、便が出にくくなり、ちょっと出血もする。家族に内緒でコッソリと薬局に通うようになり、下剤を服用し始める。出血もするから、きっと「痔」だろうと思い、ついでに痔専用薬も購入し、座薬も使い始める…。
そして、ついに我慢しきれずに病院に来て、いままでの経過をお話してもらうと、その場に一緒にいた家族の方は「そんな前からだったの!?なんでもっと早く言わなかったの??」といい、「いやぁ、薬使ってれば(便が)出てたから…。」と釈明する方は珍しくありません。
本当によくあるパターンです。その前に「薬で出てたから大丈夫」ではなく、「数ヶ月という短い期間で、薬を使わないと出ないようになった」ということ自体が異常です。とにかく、早いほうがいいに決まってます。早急に病院で検査を進めて下さい。なんでもなければ、それはそれでいいわけですから。
「おなかにしこりができている感じがする」
小腸から流れてきたばかりの奥深い大腸、「上行結腸」や「横行結腸」にできた腫瘍などに多い症状です。
さきほども述べたように、大腸の始まりの部位は、小腸からの下痢便が流れる部位です。水様の便は、がんが大きくなっても、わずかな通過できる内腔があれば、普通に流れていきます。つまり、かなり大きくなって水様便すら通ることが困難になって、通過障害の症状ではなく、大きくなった腫瘍の塊をお腹から触るようなことにもなるのです。
これが「おなかのしこり」です。肛門から遠い大腸のがんは、他部位と比較して、進行しているケースが多くみられるのは、このような場所的の性質のためです。ただし、幸いなことに、頻度は1割程度と少ないです。前に述べたような便秘の症状はあまり現れません。