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内視鏡でポリープを切除した後の過ごし方は?
明日から何の制限もなく生活できるのでは? → 無理です

どんな名医が切除しようが、どんな小さなポリープを切除しようが、治療後の合併症発現率は「0」ではありません。

 ポリープの切除後は、粘膜の一部が欠損する事になります。その欠損面積が多きければ大きいほど、出血や、穿孔(腸に穴が開く)などの合併症の発現率が高くなると言われております。

 治療による傷が大きい順に、下記のようになります。

① 「内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection;ESD」
② 「内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection;EMR」
③ 「コールド・スネアー・ポリペクトミー「Cold Snare Polypectomy;CSP」

 以下に述べるのは、あくまでも「一般論」です。

①内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の場合

 外科的手術になる寸前の大きな病変に対する内視鏡治療で、最も高い技術が求められる治療です。当然の事ですが、剥がす面積が広く深いので、合併症の発症の可能性が最も高くなり、厳重な術後管理が求められます。

 治療を行う場所、そして医師の技量によって大きな差がありますが、「入院なしで自宅で数日安静」というのはかなり稀で、一般的には「数日の入院・安静、絶飲絶食、点滴治療」が必要になります。数日経過をみて、治療部位からの出血の兆候(肛門からの出血;下血)や、腹痛、発熱などの症状が認められなければ、ゆっくりと食事が始まり、さらに数日の経過を見て、腹部のレントゲン写真などを撮影したり、あらゆる兆候の確認をして、合併症の発症が疑われない状況が続けば退院となります。

 入院が必要ということは、もちろん重労働や、運動、暴飲暴食、飲酒、外出などができないのは当然であって、日常生活レベルの体動にも制限が必要です。

②内視鏡的粘膜切除術(EMR)の場合

 ESDよりは「縛り」は強くありません。基本的には「日帰り」が可能ですが、医療機関によっては、数日の入院が必要になる場合もあります。しかし、治療後一週間程度は、無理な労働、運動、不要な遠方への外出、負担のかかる行動、飲酒、暴飲暴食などは控えるよう指示されます。

③コールド・スネアー・ポリペクトミー(CSP)の場合

 EMRよりも、さらに「縛り」は緩和されます。殆どの医療機関で入院の必要はありません。しかし、2~3日程度の無理な労働、運動、不要な外出、負担のかかる行動、飲酒、暴飲暴食などは控えるよう指示されます。


CSPの費用は? 時間は?


 大腸内視鏡検査で、盲腸まで挿入して、特に異常も認められず、治療は何もせず観察だけで終了した場合、3割負担で約7,000円程度の費用がかかります。これは、麻酔をかけていない医療機関共通の値段です(麻酔を施す医療機関では、麻酔薬、監視装置、点滴などの費用が追加されますので、さらに費用が増します(詳細は麻酔を使用している医療機関にお問い合わせ下さい)。

 もし、治療が必要な病変をその場で治療すれば、当然費用が追加されます。当院で行うCSPの場合、治療するポリープの数などによっても、多少ばらつきがありますが、約20,000~30,000円程度(3割負担)の費用がかかります。また、当院では行っていませんが、EMRも、ほぼ同額です。もし、麻酔を行っている医療機関で治療をすれば、これに麻酔に関する費用がさらに追加することになります。

 EMRやESDなどは、当院で行っておりませんので、詳細な費用はここでは申し上げる事ができませんが、入院が必要となったり、特にESDの場合は、入院期間も長くなる場合があり、各医療機関によって治療指針が異なりますので、値段にばらつきがありますので、各々、治療を受ける医療機関に直接お尋ね下さい。

 検査・治療にかかる時間は、まず内視鏡を肛門からカメラを挿入し、「盲腸」にまでカメラを進めてから、引きながら粘膜を観察して、治療が必要な病気があるかをチェックしながら肛門ま戻ります。

 挿入するまでの時間は、検査を行う医師によって大きな差があります。検査を受ける患者様の条件も大きく差がありますので、一概に「何分」と言う事はできませんが、当院の場合、多くの盲腸までの到達時間時間がは2~6分程度です。もちろん、もっと早く、2分もかかない人もいれば、20分くらいかかってしまう方も稀にいます。これは、盲腸まで到達するまでの時間なので、この後さらに、観察にかかる時間が5~6分かかります。

 ですから、観察だけで終わる方の検査時間は早くても6~7分は要します。これに、治療にかかる時間がプラスになりますが、今までも述べてきた通り、CSPは最も時間のかからない治療法なので、1つ切除しても1~2分程度の追加と思って頂ければよいと思います。
 
CSP治療後に数日の安静が確保できない場合は?


 CSPで治療できそうな病気が見つかった時、数日の安静が確保できなければ、当然ですが、その場での治療は行いません。「今回は治療せず、次回の時に治療しましょう。その時には、治療後の数日、比較的安静が保てる時期に予約を取って頂き、その時に治療をしましょう」という事になります。

 一般的に大腸がんは、何年もかけて手術が必要な大腸がんに成長すると言われています。「次回まで待っていたら病気が進行してしまうのでは?」と思う方もいると思いますが、CSPで治療できそうな病変の多くは、たかが一年後や二年後に、手術が必要な大腸がんに成長するような事はありません。

 ですから、1~2年以内に、次回は数日の安静が確保できる日に検査の予約をして、治療を受ければよいと思います。

 当院ではこれまで、「ポリープ切除は一切行っていません」と説明してきましたが、今年(2020年)より、CSPで治療ができそうな病変があった場合でかつ、数日の安静が確保できるという条件を満たす事ができれば、その場で治療しております。

 また、心筋梗塞や脳梗塞などの既往で、血液を固まりにくくする類の薬(抗凝固剤・血液サラサラ薬)を内服されている場合でも、基本的にはCSPは可能と学会等でも言われておりますが、当院の場合は念には念を入れ、より安全な医療を提供するために、そのよな薬を内服されている状況下での治療は行っておりません。

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