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様々な、おしりの病気病
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肛門には多くの静脈が集まって網の目状(静脈そう)になっており、便秘や下痢等で、普段以上に肛門に負担がかかった時に、肛門の皮下で血管が切れ、ある日突然肛門の近くに、パチンコ玉程度の大きさの半球状で痛みのある塊ができることがあります(血栓性外痔核)。 何年にもわたり、毎朝繰り返される長時間のいきみによって生じた結果、静脈やそれを形成する周囲の結合組織などが大きくなり、柔らかいイボのように膨れた物が、肛門より中に生じた場合を内痔核(ないじかく)と呼び、肛門の表面近くに生じた場合を外痔核(がいじかく)と呼びます。 そして、痔核が出たまま元に戻せなくなると、血流の還流障害を生じて強い痛みが生じます。このような状態を嵌頓痔核(かんとんじかく)と呼びます。また、複数の痔核が生じ肛門全体が全体的に脱出する場合が肛門脱(こうもんだつ)です。 直腸内から粘膜の小さな分泌腺に細菌が進入し、炎症を起こして膿が溜まると、肛門の隣に有痛性のシコリが現れます。日ごとに痛みが増強し、発熱する事もあります。これを肛門周囲膿瘍といいます。これが破れて膿が出た後に、管状のしこりが残っている状態を痔瘻(じろう)といいます。 硬くて太い便が出てると、肛門の拡張の限界を超えて、一部が切れる事があります。これを裂肛(れっこう)といいます。当然切れるわけですから、痛みも出血も伴います。 普通なら治る傷も、毎日排便を繰り返すうちに、治りにくい上皮に変わってしまい慢性化して潰瘍(かいよう)を形成し、いつまでも痛みと出血が続くようになります。このような状態を慢性裂肛(まんせいれっこう)と言います。 このように、切れ慣れてしまう状態になってしまうと、薬(座薬な軟膏)などを使用しても、一時的には改善される事もありますが、薬が切れるとまた同じ状況を繰り返す事になり、完治を望むには手術による治療が必要になります。 また、最も注意しておかなければいけないのは、長期に及ぶ肛門からの出血を放置しない事です!! 少量の出血でも、長期にわたる場合、貧血が進行し疲れやすくなったり、眩牽(めまい)を起こすことがあります。このような場合は放置せずに、直ちに血液検査を受け、貧血が強い場合は適切な処置を受ける必要があります。 痔のほかにも下血がみられる疾患として、大腸憩室症(けいしつしょう)や、大腸に炎症を生じる潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸ポリープ、虚血性腸炎(きょけつせいちょうえん)などがあります。 また大腸がん、肛門がんなどのように、進行すると取り返しのつかない病気もあります。通常は40才以上の方に多いのですが、時には、20才代にもみられることがあります。また若年者ほど発見された場合に進行している場合が多く、一刻も早く治療を受ける必要があります。 |
肛門病の症状
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【1】痛み 最も多い訴えです。上に述べたように、昨日からできた血豆(血栓性外痔核)もあれば、数日前からできた膿の溜まり(肛門周囲膿瘍)か、数か月前から痛い大腸の腫瘍によるものか、一年前から痛い、慢性の裂肛によるものか、数年前から痛い精神的な神経によるものか、原因は様々です。 その痛みが生じた期間や所見などによって、原因は多数の疾患が考えられます。 【2】 出血 ティッシュに付いた程度から、ポトリと落ちたとか、シュ!っと出た、便器の水が赤くなった等、程度によって、表現は多種多様です。その症状がいつからあったのか、他に随伴する症状はあるのかないのか?過去に大腸の検査はしてあるのかないのか? そのような条件によって、病気の種類も変わってきます。 【3】 膨らみ 肛門から、どれくらい離れた場所なのか、大きさは小指の頭くらい?それとも親指くらい?あるいは、クルミくらい出るのか?ゴルフボールくらい出るのか?いつもあるのか、排便後だけ出てくるのか?その表面の性状はどのような姿をしているのでしょうか。 単純に膨らみと言っても、お尻の周りに膨らんでいるものを総称して、素人用語で「いぼ痔」と言っていますが、そんな簡単に片づけられるものではありません。 【4】 かゆみ 虫に刺される事はまず無いと思いますが、石鹸で洗いすぎる事による皮膚の刺激だったり、腸液に接触する事によるケースもあります。また、アレルギーが原因であったり、肛門は皮膚なので、皮膚病の場合もあります。いずれにせよ、多数の原因が考えられます。 どの症状をとって見ても、到底素人判断で診断が下せるものではないという事がご理解頂けると思います。 我々医師は、常に「最悪の病気」を考えています。「とりあえず、悪いものではないかを確認する必要がある」と考えています。 長時間放置だけは避けて下さい。気になる症状があれば、些細な事でも少し勇気を出して専門としている医療機関を受診することが非常に大切です。 |
診断名からの症状
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①血栓性外痔核(血まめ) 肛門に、ある日突然、半球状のしこりができて、押したり座ったりする動作で痛みがある。 ②裂肛(切れ痔) 排便時に痛みが強く、排便後もしばらく痛みが続く。 ③内痔核 排便時に柔らかい突起物が出てくる。小さいうちは自然に収納されるが、次第に大きくなると、指を使って押し込むようになる。 ④嵌頓(かんとん)痔核 指で押し込んでいた内痔核が、肛門外で大きくなってしまい、「収納できない状態」になってしまった痔核。 ⑤肛門脱 何年も放置した大きな内痔核が2~4か所にでき、肛門をとりまくように、脱出する状態 ⑥肛門周囲・直腸周囲膿瘍・アテローム 肛門周囲に違和感が生じ始め、日単位で痛みが増強し、さらに放置すると発熱し、激しい痛みのため座れなくなることもある。 ⑦痔瘻 膿瘍が排出されたことによって生じる、膿が溜まっていた袋が索上にしこりとして残った状態。分泌物が出続ける事もある。 ⑧直腸脱 排便時にいきむと、腸が長く外に垂れて出てくる。 ⑨潰瘍性大腸炎・クローン病 肛門からの出血が数ヶ月前より継続し、痔の薬を使っても改善せず、下痢、頻便、粘液便などがみられる。 ⑩肛門周囲湿疹・肛門皮膚掻痒症 肛門周囲が痒い ⑪肛門ポリープ 小指の爪くらいの小さなツルリとした膨らみが排便時に出てくる。 上に述べたように、「診断名からの症状」を一覧にしましたが、これは、なかなか「肛門科」を受ける勇気がない、周囲に肛門を専門にしている医療機関はがない、という方の為に「とりあえず一覧を作った」という事に過ぎません。 つまり、羞恥心からなかなか専門の医療機関を受診しない患者様は沢山いますが、ここで注意していおかないといけないのは、「俺(私)の症状はコレに似てるから、きっとコレだろうな」と、素人判断で済ませてしまうのが最も危険な事である、という事です。 場所が場所だけに、他人に見せて判断してもらうには、「勇気」がいる場所であるのは間違いないのは当方も承知です。ですが、素人がインターネットでいくら調べても、所詮素人判断の閾値を超える事は不可能です。 命に関わる病気(いわゆる大腸がん)が無いという事は精査をしない限り、誰にも言えません。「羞恥心も必要最低限」にして頂き、専門とする医師に診てもらう勇気も必要だと思います。「もっと早く診てもらえばよかった」と思う機会は絶対に経験してはいけません。その点だけを肝に銘じて頂ければ幸いです。 |
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