大腸内視鏡検査を受けるキッカケ(引き金)となったものは!? |
当院では、これまで述べてきたように、全例において麻酔をかけませんので、終始会話が可能な状態にあります。そんな状況下で、かなりの確率で聞いている質問があります。それは、「今日、どうしてこの検査をすることになったのですか?」です。
多くの患者さんの答えは、「痔ができて、受診して・・・」から説明が始まります。確かにその通りで、よくよく話を聞いてみると、最終的に行きつくキッカケ(引き金)となる理由で最も多いのは「出血したから」です。
大腸がんは、小さなポリープから始まって、「年(ねん)」単位という時間をかけて成長し、次第に内視鏡では切除しきれない大きさに成長したものが、「手術」の対象となるのです。しかし、手術が必要な大きさにまで成長しても、自覚症状が出にくいのが大腸がんの特徴です。ですから、理想を言えば、下記に述べるような「自覚症状が無くても、検査を受ける事」が大切なのです。
では「大腸がんの存在を心配するような自覚症状」とは、どんなものがあるのでしょうか?
出血に関する訴え |
「血が出た」 「黒い便がでた」 「便器の水が赤くなった」 「ティッシュで拭いたら赤かった」 「便の表面がなんとなく赤かった」 |
便の性状に関する訴え |
「便が細くなった」 「便が出にくくなった」 「排便後も便が残ってるような感じがする」 「便が小分けに出るようになった」 |
お腹の症状の訴え |
「お腹がはる」 「お腹のこの辺がたまに痛い」 「最近、ゴロゴロとよく鳴る気がする」 |
しかし、これら全ては何度も言いますが「自覚症状」です。大腸がんは、手術が必要な大きさに成長しても、すぐに「自覚症状」が出いので、これらの症状が無くても、検査を受ける事が大切です。
では、自覚症状がなくても、大腸内視鏡検査を受ける人の「キッカケ」とはどんなものなのでしょうか?
「トシ(歳)だから」(40歳が最初の節目)
「勧められたから」
「今まで受けた事がないから」
「友人、家族、知人がポリープを取った、あるいは大腸の手術を受けたから」
「過去に親が大腸がんを経験していたから」
「番組で大腸がんの特集をしていたから」
「有名人が大腸がんでお亡くなりになったから」
これらの理由で内視鏡検査を受ける事を決心したのなら、キッカケ的には理想的な理由です。
ですから、「毎日快便で、お腹も痛くなくて、お通じで困った事全くなし!がんの存在を心配する様な症状も全くなし!」という状況であるにもかかわらず、内視鏡検査を受けるのが最も理想的です。もちろん、大腸がん検診で代表される「便潜血検査」に陰性という結果をもらっているにも関わらずです。
中でも、最も理想的な理由が、「時期が来たから」です。ここで言う「時期」とは、原則2年に一度は、定期的に受けておけば、かなり高い確率で大腸がんの手術を回避できる事が期待できるという事実に基づいて、検査後、治療が必要な病変が何もなかった患者さんには、「ではまた2年後に!」と言って送り出していますので、「今日、どうして受けたの?」と聞かれたら、「時期がきた(2年が過ぎた)から」が最も理想的な理由です。
「え!噂によると、あの大変な大腸カメラを2年に一度!?」と思う人もいるかと思いますが、お蔭様で、当院で検査を受けて頂いた方の多くは、「思ったよりも楽だった」「前の病院よりも楽だった」「前回よりも楽だった」「これなら胃カメラよりも楽」「友人・家族に勧められる」「これくらいなら2年に一度くらい受けられる」「また2年後にお世話になりたいと思う」というような感想を、全員ではありませんが多数頂いております。
素人の噂だけで「大腸内視鏡検査は大変な検査だ」「あんな検査受けるもんじゃない」というような話を聞いたら、殆ど全ての人が検査を拒絶するでしょう。
ここで最も問題はのは、そのような印象を受けた医療機関の場所の問題です。「その情報を教えてくれた人は、どこの病院で検査を受けたの?」と聞くと、殆どの方は「そこまでは聞いていません」と答えます。そこが一番問題なのです。
「大腸内視鏡検査=辛い検査」ではないのです。つまり、「どこで受けたのか?」が一番大切な情報なのです。
「一度でも大腸内視鏡検査で大変な思いをしたから、どこの医療機関で検査を受けても同じ」というのが大きな誤解です。受ける医療機関によって、その印象は大きく異なります。
過去の苦痛な検査の印象を払拭するような検査を提供するのが私の仕事です。しかし、多くの患者様に好評をいただいても、「多くの」という影には少数派もいますので、期待するような検査が提供できない方も少なからず存在するのも事実です。
大腸内視鏡検査を受けるには、下剤を多量に飲んで、お尻からぐりぐりとカメラを挿入され…。でも、そんな大腸内視鏡検査に必要とされる努力、労力は何と引き換えにするのでしょうか?
それは、手術が必要になるような段階になる前に病変が発見できる可能性があるからなのです。つまり、大腸内視鏡検査は、「大腸がんの手術」と引き換えになるのです。検査と手術、どちらが楽かは容易に想像できると思います。
これまで述べたような内容を踏まえて、検査中の「どうして今日、内視鏡検査受ける事になったの?」のという質問に「時期が来たから!」と、気軽に答えられる状況が迎えられるような検査が提供できる事を目標に日々「楽な大腸内視鏡検査」を提供するよう心掛けて検査をしています。